適正取引ハンドブック・こんな取引条件に要注意! パート3

今回は、『建設企業のための適正取引ハンドブック』のこんな取引条件に要注意!パート3です。

 

【2章 こんな取引条件に要注意!】

6.支払期日が守られていますか?

・工事目的物が完成引き渡し後に、正当な理由がなく、長期間にわたって保留金として工事代金の一部が支払われない場合は、建設業法違反になるおそれがあります。
・元請負人が注文者から支払いを受けた日から1ヶ月以内、又は下請負人の引渡しから50日以内のどちらか早い方で下請代金を支払わない場合は、建設業法違反になるおそれがあります。

◆チェックポイント=注意すべき点
・工事の完成・引き渡し後に、保留金のない支払いがされていますか?
・支払期日は、元請負人が注文者より支払いを受けてから1ヶ月以内、又は下請負人からの引渡し申し出から50日以内となっていますか?

建設業法令遵守ガイドライン9支払保留
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①下請契約に基づく工事目的物が完成し、元請負人の検査及び元請負人への引渡し終了後、元請負人が下請負人に対し、長期間にわたり保留金として下請代金の一部を支払わない場合
②建設工事の前工程である基礎工事、土工事、鉄筋工事等について、それぞれの工事が完成し、元請負人の検査及び引渡しを終了したが、元請負人が下請負人に対し、工事全体が終了(発注者への完成引渡しが終了)するまでの長期間にわたり保留金として下請代金の一部を支払わない場合
③工事全体が終了したにもかかわらず、元請負人が他の工事現場まで保留金を持ち越した場合

建設業法第24条の3第1項
元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となつた建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない

◆こんな取引を目指しましょう!
・工事の完成・引き渡し後に、請負代金の支払いを保留することなく、建設業法で定められた支払期間内の日付で支払期日が設定されていることを確認しましょう!
・請負代金の支払いは、請求書提出締切日から支払日までの期間をできる限り短くし、早い時期支払われるように協議しましょう!

7.協議もなく一方的に支払代金を差し引かれてはいませんか?

・見積条件や契約書において差引額に関する事項を明示しなかった場合は建設業法違反になるおそれがあります。
・双方も協議・合意がなく、元請負人が一方的に根拠不明確な諸費用を差し引いたり、実費より過大な費用を差し引いた場合は建設業法違反になるおそれがあります。

◆チェックポイント=注意すべき点
・見積条件や契約書面に差引額について明らかになっていることを確認したうえで、お互いに協議・合意をしていますか?
・請負代金から一方的に、根拠が不明確な諸費用を差し引かれたり、過大な費用が差し引かれたりしていませんか?

建設業法令遵守ガイドライン7赤伝処理
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】

①元請負人が、下請負人と合意することなく、下請工事の施工に伴い副次的に発生した建設廃棄物の処理費用、下請代金を下請負人の銀行口座へ振り込む際の手数料等を下請負人に負担させ、下請代金から差し引く場合
②元請負人が、建設廃棄物の発生がない下請工事の下請負人から、建設廃棄物の処理費用との名目で、一定額を下請代金から差し引く場合
③元請負人が 元請負人の販売促進名目の協力費等 差し引く根拠が不明確な費用を 、下請代金から差し引く場合
④元請負人が、工事のために自らが確保した駐車場、宿舎を下請負人に使用させる場合に、その使用料として実際にかかる費用より過大な金額を差し引く場合
⑤元請負人が、元請負人と下請負人の責任及び費用負担を明確にしないままやり直し工事を別の専門工事業者に行わせ、その費用を一方的に下請代金から減額することにより下請負人に負担させた場合

◆こんな取引を目指しましょう!
・工事で生じた残材の処理費、現場の清掃費、安全協会費などの費用負担を明確して、請負代金から差し引く事項を書面で確認しましょう!
・差引額について透明性が確保されるように、算定根拠や使途などを明らかにして、元請負人と下請負人が合意のうえで請負契約の支払に反映しましょう!

8.割引困難な長期手形で支払われてはいませんか?

・手形期間が120日を超える長期手形を交付した場合、割引困難な手形と認められる場合があり、建設業法違反になるおそれがあります。
・手形を交付する場合には、現金化にかかる割引料等のコストについて下請負人の負担とするようなことがないように十分な協議が必要です。

◆チェックポイント=注意すべき点
・支払われた手形期間が120日以内になっていますか?
・手形の割引料などのコストが下請負人の負担になっていませんか?

建設業法令遵守ガイドライン10長期手形
【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
特定建設業者である元請負人が、手形期間が120日を超える手形により下請代金
の支払を行った場合。
建設業法第24条の6第3項
 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となつた下請契約に係る下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならない

◆こんな取引を目指しましょう!
・支払の手形期間は120日以内で、できる限り短い期間内として、割引料などのコストは下請負人が負担することのないように協議しましょう!
・下請代金はできる限り現金支払いとし、現金支払いと手形を併用する場合でも、少なくとも労務費用相当分は現金支払いとするように協議しましょう!

建設業法第24条32項
 前項の場合において、元請負人は、同項に規定する下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならない。

以上の8項目が『建設企業のための適正取引ハンドブック(第2版)』で紹介されている「こんな取引条件に要注意!」です。お読みいただきありがとうございます、すぐに使えるかどうかは別にして知っておいて損はない知識だと思います。

次回は、『建設企業のための適正取引ハンドブック(第2版)』・3章「適正取引のためのノウハウ」について取り上げてみます。